がまんじゃなくて“選び直し”——見守る育児の小さな発見

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子どもは日々、泣いたり笑ったり怒ったりしながらも、実は“自分で選ぶ力”を少しずつ育てています。
けれど、毎日の生活に追われていると、その小さな成長の瞬間を見逃してしまうことって、ありますよね。

私自身、何かに気を取られて「あっ、いま何か変わったかも」という場面をスルーしてしまったことが何度もあります。
後から思い出して「あのとき声をかければよかった」「ちゃんと見てあげたかった」と悔やむことも。

でも最近、そんな私の心に小さな変化がありました。
きっかけは、娘のある一言と、そのときの表情でした。


見守るって、どういうこと?

奪わず、怒らず、選び直した娘の姿

「青、か・し・て!」
クレヨンを使っていた1歳半の弟に向かって、4歳の娘が言いました。
けれど弟は「んー?」と首をかしげるだけ。まったく通じていません。

私は、またケンカになるかな……と心の中で身構えていました。
でも、娘は奪うでもなく、怒るでもなく、少し間を置いて、何も言わずに別の色のクレヨンを手に取り、描き始めたのです。

その姿に、私は驚きました。

見守る=放っておく、じゃないんです

このとき私は「見守るって、こういうことかもしれない」と初めて実感したんです。

見守るとは、ただ遠くから見ていることではなく、「何かあったらすぐに助けられるように」心を寄せながら、その子の選択や行動を信じて待つこと。

まるで、綱渡りをしているわが子のそばで、すぐ下にネットを広げているような気持ちです。
落ちたら支える。でも、渡るのは本人。そんなスタンスです。

「スタンバイ姿勢」が心を育てる理由

もしあのとき、私がすぐに「今は弟が使ってるから、赤にしたら?」と声をかけていたら、娘は“選び直す”という経験をすることはなかったかもしれません。

選び直す力って、子どもが人生を自分で歩いていくための小さな土台になります。
どんな場面でも、思い通りにならないことって必ずありますよね。
そのとき「じゃあこうしてみよう」と思えることが、心の柔らかさとたくましさにつながる。

私たち親ができることは、その土台が育つ時間を、そっと見守ることなんだと感じました。


今できなくても大丈夫。あとから伝える力

「あとで声をかけた」だけで伝わる安心感

実は、あのとき私はすぐに娘に声をかけることができませんでした。
夢中でお絵描きをしている娘の邪魔をしたくなくて、「あとで言おう」と心の中で決めたまま、すっかり忘れてしまったんです。

でも、翌朝ふと思い出して伝えてみました。

「昨日、青が使えなかったのに、違う色で描いたでしょ?あれ、すごく素敵だったよ」

娘は少し照れくさそうに笑いながら、
「うん。でもレンくん(弟)が終わったら、エリカ(自分)も使ったよー」と答えてくれました。

見てたよ、が子どもを肯定する言葉に

「がまんした」ではなく「ちゃんと叶った」ことを、娘は覚えていて、それを私に教えてくれました。

あとからでも、
「ちゃんと見てたよ」「あなたの選んだこと、すごくよかったよ」
と伝えるだけで、子どもの心にはしっかりと届くんだと実感しました。

たとえその場で反応できなかったとしても、あとで思い出したときに、ひとことでも声をかければいい。
それだけで、子どもは自分の行動を認めてもらえたと感じて、心の中にポッと灯りがともるんです。

実践例:
・「昨日、弟におもちゃ貸してたね。ママ、ちゃんと見てたよ」
・「さっき自分で片付けたの、えらかったね。後で気づいてごめんね」


子どもが“できた!”と感じられる時間のつくり方

泣く前の30秒が、選ぶ力を育てる

何かがうまくいかないとき、子どもは「泣く」か「怒る」かで表現します。
でも、その直前にほんの30秒、「どうしようかな」と考える時間があるんです。

その30秒に、親が口を出さずに待ってあげる。
ただそれだけで、子どもは「自分でできた!」という経験を一つ積むことができます。

もちろん、泣き出したら助けて大丈夫。
無理にひとりで乗り越えさせる必要はありません。
でも、その前に一呼吸おいてみる。

私もこの「30秒の見守り」を意識するようになってから、娘の「自分でなんとかする姿」を目にする機会がぐんと増えました。

がまんじゃなくて「選び直せたね」と伝える

「我慢できたね」ってつい言ってしまいそうになりますが、我慢の裏にはたいてい“がまんさせた側”がいますよね。
でも「選び直せたね」は、子ども自身の内側にある力に目を向けた言葉です。

そう言われることで、「自分で選んだ」ことが肯定されて、子どもはもっと自由に、自分の方法で問題に向き合えるようになります。

実践例:
・「さっき違うおもちゃに変えてたね。自分で選び直せたんだね」
・「泣かなかったね」ではなく、「自分でこうしようって考えたんだね」


穏やかな関係は偶然じゃない——きょうだいげんかを見守る

譲ったお姉ちゃんの言葉が教えてくれたこと

別の日、娘と弟が同時に「絵本読んでー!」と本を持ってきました。

私は「どうするのかな?」と、またも心でスタンバイ。

すると娘が、
「レンが先でいいよ。その絵本、エリカも好きだから」
と言って譲ったのです。

私は心の中で思わず実況中継。
「ここで譲るか……譲ったーっ!!」と。

その夜、そっと伝えました。
「さっき譲ってくれたの、すごく素敵だったよ」

娘はニコッと笑って「うん。レンくん、嬉しそうだったね」と返してくれました。

あとから伝えるだけでも、ちゃんと届く

きょうだいげんかは日常茶飯事。
でも、こうして穏やかに過ごせる時間が増えているのは、娘が「選び直す」経験を重ねたからだと思っています。

そしてそのたびに、私が「ちゃんと見てたよ」と伝えたことが、娘の中で**「これでいいんだ」**と感じる安心感につながっているのだと思うのです。

実践例:
・「さっき譲ってくれてたね。ああいうのって、ママすごく嬉しいな」
・「今の、怒らないで待ってあげたの気づいたよ。ありがとう」


親が「今」をどう支えるかで、自己肯定感は育つ

日々の小さな選択を見逃さないで

子どもは毎日、小さな選択をくり返しています。

「青がいい」「これはやだ」「もう一回やる」など、そんなささやかなやり取りの中に、ちゃんと**“自分で決める”力**が宿っています。

それに気づき、見守り、あとからでも伝えていくこと。

この積み重ねが、自己肯定感につながるのだと思います。

「見てたよ」の積み重ねが、子どもを強くする

私も最初は「ちゃんと見なきゃ」と思いすぎて、見守ることがプレッシャーになっていました。
でも今は、「あとからでもいい」「気づいたときに伝えればいい」と思えるようになったことで、見守ることが少し楽になりました。

それでも、子どもの変化を感じたときは、なるべくすぐに心のメモを取っておくようにしています。
忙しいとつい忘れてしまうから、小さな一言だけでもスマホにメモするようにしているんです。

実践例:
・メモアプリに「エリカ、弟にクレヨン譲った」など短く記録
・夜寝る前にメモを読み返して「見てたよ」と伝える


子育ては、毎日が選び直しの連続です。

親も、毎回うまくできなくても大丈夫。

私も「あとから伝える」ことを意識するようになってから、娘とのやり取りに余裕が持てるようになりました。

見守るって難しそうに聞こえるけれど、実はとてもシンプルなこと。
「ちょっと待ってみる」「あとから声をかける」だけでも、子どもの心はぐんと育つんだなと、今は思えるようになりました。

そして、あのとき迷っていた私自身にも、こう伝えたい。

見てるだけじゃないよ。ちゃんと心を寄せて、なにかあれば手を差し伸べる準備ができている。それが、“見守る”ということだよ。

今日からぜひ、泣く前の30秒だけ待ってみてください。
きっと“選び直す力”を発揮する姿に、あなたも驚かされるはずです。


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